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分析事例1 ROA分析 日本スキー場開発(長野県白馬村)

弊社に分析をご依頼いただいた場合に、実際に報告させていただくレポートのご案内を兼ねて、日本スキー場開発(先の日本縦断ROA分析では、8.8%の優良企業です)の財務分析をしてみました。

経営情報分析(日本スキー場開発)

 
直近3年分の決算書があれば、このようにその会社のことは大体分かります。
会社の経済活動は、すべて決算書に反映されるからです。
経営者の皆様の中には、決算書はもっているがどうやって見たらいいか分からないという方も多いと思います。
それは非常にもったいないことです。
弊社に分析をご依頼いただければ、次のようにその会社ごとに、コンサルタントが独自の視点で丁寧に分析いたします。

(1)B/S財務分析表
決算書のうち貸借対照表について直近3期を分析します。
「資金の運用状況」が分かるのが特徴です。
貸借対照表の右側(負債、純資産)は資金の調達源泉を、左側(資産)は資金の運用状況を現しています。
パッと見で7億円を調達して、大部分を固定資産への投資に使ったのだなということが分かります。
7億円の中身は、当期利益が大部分の6億円を占めていますので、とても健全です。
その他に長期で1億円を調達しています。これはどうやって調達したのかEDINETで決算書を確認したところリースでの資金調達でした。
運用先の有形固定資産は、建物および構築物2.7億円、機械装置1.8億円、車両1億円、備品0.4億円、建設仮勘定▲1.1億円となっております。
期をまたいで建設していたクラブハウスが完成したのではないでしょうか。新しいクラブハウス行ってみたいものです。
また、繰延税金資産が1.5億円増えています。

棒グラフを使った構成グラフも見やすいです。
パッと見で、自己資本が毎年増えているのが分かります。
健全な証です。

趨勢率を使ったレーダーチャート図もありますので、決算書を視覚的イメージでとらえることができます。
固定資産が増えている分、固定負債が増えているので、健全です。
これが、固定資産が増えているのに、流動負債が増えていたら、危険信号ですが、流動負債は減っているので問題ありません。
純資産もしっかりと増えています。

貸借対照表の基本的な分析手法として、資産合計を100として、それに対する現預金や、自己資本の割合(構成比)をみるというものがありますが、当然その分析もできます。
資産に対する現預金比率が30%を超えていて、自己資本比率は80%を超えています。
とてもキャッシュリッチな会社です。
これはどこか大手の資本が入っているのかなと思ってEDINETを見てみたところ、東証一部上場の日本駐車場開発(株)が67.2%を持つ親会社でした。
親子で上場しているわけですね。
閉鎖するスキー場のニュースを最近よく耳にしますが、これだけ財務基盤がしっかりしていたらこちらの会社は大丈夫なのではないかと思います。

運営している川場スキー場、菅平高原スノーリゾートは行ったことがありますが、こうやって分析してみると一層親しみがわきます。

(2)P/L財務分析表
決算書のうち損益計算書について直近3期を分析します。
企業経営において、利益を出さないことには何も始まりませんので、弊社においても財務分析をするうえで、損益計算書を一番重視しています。
前期から当期、前々期から前期の伸び率が一目で分かるのが特徴です。
売上高が前期から当期で4.4%増加、前々期から前期で3.2%増加しています。
利益は前期から当期で21.7%増加、前々期から前期で50.7%増加しています。
2期連続増収増益を達成します。
先にB/Sを分析してキャッシュリッチな会社だなと感じましたが、その源泉は、P/Lにあるようです。
これだけ、スキー場の閉鎖が続く社会環境の中で、増収増益を続けられるのはすごいと思いますので、もっと深く調べてみたい会社です。
長野オリンピックのスキー会場にもなった、白馬村に本社があり、環境が良いのかもしれませんね。

構成グラフにより、概要をつかむことができます。
売上高に対する、原価、販管費、利益の割合が毎年安定していることが分かります。

趨勢率レーダーチャートでは、決算書を視覚的イメージでとらえることができます。
この一目で分かるのがレーダーチャートの特徴です。
一般的な決算書を見ているだけでは、決算書を始めから終わりまで見ないと、異常な動きをしている勘定科目が分かりません。
もちろん、決算書を隅から隅まで見れば分かることですが、まずレーダーチャートで特殊な動きをしている勘定科目に目星をつけてから決算書を見ると大きな見落としがなくなります。

損益計算書の基本的な分析手法として、売上高を100として、それに対する原価や、利益の割合を見るというものがありますが、当然その分析もできます。
原価率は毎年42%前後で安定しています。
利益率も5%~9%と安定しています。

(3)安全性の分析
その名の通り、会社経営の安全度を分析するものです。
すでに、先のB/SとP/Lの分析で、キャッシュリッチな上に、親会社もしっかりしていて、増収増益を続けている会社ということは分かっています。
それが指標にも出ているでしょうか。
1.総資本対自己資本比率・・・貸借対照表の右側の資金の調達源泉である負債・資本の合計に対する、資本の割合を示す指標です。直近3年間80%前後で推移していますので、ほとんど自己資本でまかなえている会社です。毎年黒字を続けているからなんでしょうね。つまりお客さんに受け入れられているということです。

2.流動比率・・・流動負債に対する流動資産の割合です。200%以上あれば安全と言われていますが、500%を超えています。

3.当座比率・・・流動負債に対する当座資産の割合です。400%を超えています。コロナウイルスの影響を受けても当面の資金繰りは問題ない会社ということになります。

4.固定比率・・・自己資本に対する固定資産の割合です。70%前後で推移しています。長期投資を全て自己資本でまかなえてしまっているということになります。
長期投資は、長期借入金と自己資本でまかなうのがキャッシュフロー経営のセオリーですが、長期借入金を使うまでもなく、自己資本でまかなえてしまっています。
とても安全な会社です。

5.固定長期適合率・・・自己資本と長期借入金の合計に対する固定資産の割合です。60%台で推移しています。自己資本だけでまかなえているわけですから、さらに問題ないです。

6.負債比率・・・自己資本に対する負債の割合です。10%台で推移しています。自己資本比率がものすごく高いわけですから、こちらは当然低くなっています。

7.借入金依存度・・・総資本に対する借入金の割合です。3%前後で推移しています。スキー場というのは設備産業の代表格ですが、ほとんど借入をしていないというのには驚きました。借入が膨らんで経営破たんするスキー場が多い中で、とてもすごいことだと思います。

8.借入金限界点・・・利益を金利で割って計算します。借入可能額の目安に使いますが、自己資本で経営できているこちらの会社には必要ない数字です。

9.キャッシュフロー・・・当期利益+減価償却で計算します。その源泉は利益です。増収増益を続けているので、キャッシュフローは毎年黒字です。

(4)収益性の分析

会社の利益に関する指標を分析します。

グラフ、レーダーチャートとも、すべての指標が3期とも安定しているのが目につきます。

1.総資本対経常利益率(ROA)・・・経常損益/総資本

⇒総資本(負債+自己資本)イコール総資産ですので、保有している総資産からどれだけ利益を上げたかを現しています。資産を有効に使っているかが分かります。

2.売上高対売上総利益率・・・売上総利益/純売上高

⇒売上高に対する売上総利益(粗利)の割合を現しています。売上総利益は売上高から原価を引いたものですので、扱っている商品の利幅を現しています。

3.売上高対営業利益率・・・営業損益/純売上高

⇒売上高に対する営業利益の割合を現しています。営業利益は粗利から販売管理費を引いたものです。つまり扱っている商品を販売するのにかかった諸経費まで考慮した利幅を現しています。

4.売上高対経常利益率・・・経常損益/純売上高

⇒売上高に対する経常利益の割合を現しています。経常利益は営業利益から支払利息を引いたものです。つまり資金調達コストまで考慮した利幅を現しています。

5.売上高対支払利息比率・・・(支払利息-受取利息)/純売上高

⇒売上高に対する支払利息の割合を現しています。売上高に対する資金到達コストの割合を現しています。

6.総資本回転率・・・純売上高/総資本

⇒総資本(負債+自己資本)に対する売上高の割合を現しています。調達した資金(負債+自己資本)が売上高として回収しないといけませんから、回転数が多い方が調達した資金を有効に使えているといえます。

7.現金預金回転期間・・・365÷(純売上高/現金預金)

⇒何日分の売上高に匹敵する現金預金があるかを現しています。4ヶ月分の売上高に匹敵する現金預金があります。4ヶ月は売上が上がらず経費だけ掛かっても持ちます。

8.棚卸資産回転期間・・・365÷(純売上高/棚卸資産)

⇒在庫が何日で売上に変わるかを現しています。ほぼ一週間で売上に変わっています。仕入れれば一週間後には売上になるわけですから素晴らしいですね。

9.売上債権回転期間・・・365÷(純売上高/売上債権)

⇒売掛金が何日で入金になるかを現しています。こちらもほぼ一週間で入金になっています。キャッシュが安定しているわけです。

10.固定資産回転期間・・・365÷(純売上高/固定資産)

⇒固定資産が何日で売上に変わるかを現しています。一年経たずに売上に変わっています。設備投資のしがいがあるというものです。

(5)生産性の分析

税金の確定申告は、会社全体でみるため、従業員一人当たりの指標というのは使いませんが、会社経営をしていくうえでの内部管理的には、この一人当たりの分析は非常に重要です。会社が忙しくなると、従業員を増やすケースが多いですが、それが必ずしも利益に結びつくとは限りません。また、一人当たりの生産性が高い(=付加価値が高い)からと言って、一人当たりの利益が高いとも限りません。人件費負けしてしまう可能性もあるからです。一人当たりの売上高を増やし、一人当たりの付加価値を増やし(従業員に還元し)、一人当たりの利益も増やす(会社の利益を増やす)ことを目指しましょう。従業員の成長・発展なくして、会社の成長・発展はないと思います。

1.付加価値(日銀方式)・・・経常利益+人件費+利息+賃料+租税+減価償却費

2.付加価値率・・・(付加価値/純売上高)×100

3.一人当たり売上高・・・純売上高/従業員数

4.一人当たり付加価値・・・付加価値/従業員数

5.一人当たり経常利益・・・経常損益/従業員数

6.労働装備率・・・有形固定資産/従業員数

7.設備投資効率・・・付加価値/有形固定資産

8.有形固定資産回転率・・・純売上高/有形固定資産

(6)損益分岐点の分析

企業経営において非常に重要です。いくら売上たら黒字になるかということです。これを知らずに会社を経営している方が意外と多いです。なぜかと言うと税金の確定申告に使う決算書からでは計算できないからです。税金の確定申告に使う決算書に変動費、固定費という区分は出てきませんが、損益分岐点を計算するためには、経費を変動費と固定費に区分する必要があります。これを変動損益計算書といいます。弊所に分析をご依頼いただければ、いくら売上たら黒字になるかをご提案いたします。それが分かっていれば、それを月単位、週単位に落とし込んで、販売計画を立てることができます。販売計画が立てば、スタッフがやるべきこともおのずと決まってきますので、会社経営がスムーズに回ります。

1.変動比率=変動費/売上高

2.損益分岐点売上高=固定費/(1-変動比率)

3.経営安全率=(売上高-損益分岐点売上高)/売上高

4.必要売上高=(固定費+目標利益)/(1-変動比率)

 

 

決算書を有効に活用して、会社経営に活かしていただきたいというのが弊社の願いです。

是非そのお手伝いをさせてください。

 

 

株式会社BPCブレイン

代表取締役/経営コンサルタント 飯塚智治

 

※(注)経営情報分析のPDF中で、新株予約権とあるのは、新株予約権と非支配株主持分の合計です。


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